MITメディアラボのデジタル・カレンシー・イニシアチブへのIOTA財団の回答 – パート 4 / 4

補足説明
この記事は原題『Official IOTA Foundation Response to the Digital Currency Initiative at the MIT Media Lab — Part 4 / 4』の日本語訳です。必要だと思われる部分には言葉や構成を補っています。
トップ画像は『Official IOTA Foundation Response to the Digital Currency Initiative at the MIT Media Lab — Part 4 / 4』より引用しております。

投稿者:IOTA財団
投稿日:2018年01月07日

編者注:
4つのパートに分かれるこれらのドキュメントに含まれるすべての情報とリンクは、この記事の公開前にも知り得るものでした。ここに記載されている情報は、新たに明らかにされたものではありません。

このドキュメントはIOTA財団とIOTAコアチームの多くのメンバーによる集団的努力です。記事としてまとめた目的は、複雑で多面的な問題に色と文脈を追加することで、分散台帳技術(DLT : Distributed Ledger Technology)コミュニティ全体が、自分で情報の妥当性を決めることができるようにするためです。

DCIの主張に対する詳細な返答

以下では、伊藤穰一氏のIOTAへの批判からの引用が、各セクションの冒頭に示されます。そして、それに続く形でIOTA財団の回答が示されます。

3.IOTAネットワーク上の手数料無料のトランザクション

DCIの主張 :

IOTAは手数料無料というOrcuttの主張は誤解を招く恐れがあります。おそらくすぐにはピンとこないと思いますが、IOTAのトランザクションは、Bitcoinのトランザクションとまったく同じ意味で「手数料ゼロ」です。重要な違いは、Bitcoinにはあなたのためにプルーフ・オブ・ワークを行うマイナーが存在する一方で、IOTAユーザーはトランザクションごとに自分のデバイスでプルーフ・オブ・ワークを行うことです。しかし、Bitcoinユーザーも自分のブロックをマイニングして、他人に手数料を支払うことなくトランザクションをブロックチェーンに含めることができます。別の言い方をすれば、ほとんどの人は、例え”電気を必要としません!”と広告されていても、自分でハンドルを回す冷蔵庫を買おうとは思わないでしょう。

Bitcoinや他のデジタル通貨のトランザクションが、例え何千もの他のトランザクションを含んだブロック処理をしたとしても、IOTAのトランザクションよりもはるかに多くのプルーフ・オブ・ワークを必要とすることは事実です。しかし、IOTAのトランザクションがより簡便であるという主張にはならないのに、IOTAのトランザクションは無料であると主張されています。

意味論はさておき、IOTAのマーケティング資料に現れるこの主張は誤解を招きます。IOTAに必要とされるプルーフ・オブ・ワークは、他人への金銭の支払いが必要か否かにかかわらず、手数料です。手数料を支払う方法を限定しても、(ユーザー自身のデバイスでプルーフ・オブ・ワークを行うことを要求しても)手数料がなくなるわけではありません。

DCIの記事でもたらされた説明と類推は根本的に間違っています。そのような手数料の定義には同意しかねます。なぜならいかなる第三者も、IOTAのトランザクションに対して特に支払いを受け取ることがないからです。また、現実的な方法で「Bitcoinユーザーも自分のブロックをマイニングして、他人に手数料を支払うことなくトランザクションをブロックチェーンに含めることができます。」という前提にも現実的に考えると疑問を抱きます。

IOTAには、動機付けの必要があるマイナーやその他のいかなるネットワーク運用者も存在しません。したがって、BobがAliceに1IOTAを送金すると、AliceはBobからきっちり1IOTAを受け取ります。送金額=受取額であることからも、さらにはそれに伴うエネルギーコストが些細であることからも、IOTAのトランザクションは”手数料無し”と言っても、まったく不正確でもないし、誤解を与えるようなものでもないと私たちは思っています。

IOTAのトランザクションではあるコンピューター計算に必要なエネルギーが消費されますが、ユーザーのPC、携帯電話などの低エネルギーデバイスでも数秒で計算できるほど小さいものです。BitcoinとEthereumの代名詞であるマイニング工場と比べてみてください。


Bitcoinマイニングファームのビデオは、エネルギーの無駄と騒音を示しています。

DCIの記事は“ほとんどの人は、例え’電気を必要としません!’と広告されていても、自分でハンドルを回す冷蔵庫を買おうとは思わないでしょう。”と述べていますが、実際のところはこのように例えた方が良いでしょう。”冷蔵庫のドアを自分で開けるか” 対 ”マイナーにお金を払ってドアを開けてもらうか”です。確かに、ドアを開くために多少のカロリーを消費しますが、ほとんどの人は常識的な意味からいって自分でドアを開けることを「手数料」とは考えないでしょう。

IOTAがプルーフ・オブ・ワークを必要とする理由は、IOTAのホワイトペーパーで明確に説明されています。IOTAの場合、プルーフ・オブ・ワークはハッシュキャッシュと同様にネットワークへのスパムシビル攻撃に対する予防手段としてのみ機能します。

逆に、Bitcoinや他のプルーフ・オブ・ワークベースのコインの場合、プルーフ・オブ・ワークは公平で分散化された非中央集権的な宝くじとして機能し、次のブロックをチェーンに追加するマイナーに新たに発行されたコインが報酬として与えます。すべてのマイナーからの累積ハッシュ・パワーは、潜在的な攻撃からネットワークを保護します。しかし、これはBitcoinの価格が上昇するにつれて、マイナーたちが次々とコンピューター計算能力の増加に努めてしまい、収益性が高まっていくビットコイン報酬を勝ちとるためのプルーフ・オブ・ワークという”軍拡競争”になります。各ブロックの容量は限られており、約10分ごとにチェーンに追加される新しいブロックは1つだけなので、ネットワーク上のトランザクションの数が増えるにつれて1ブロックの不動産価値がどんどん高くなります。そのためにトランザクション手数料を取引する市場が成長するのです。

DCIはBitcoinユーザーは簡単に「自分のブロックをマイニングして、手数料を支払うことなくトランザクションをブロックチェーンに含めることができます。」と主張していますが、これは明らかに不合理です。今日、Bitcoinマイニングの計算では、この執筆時点で、年間10億ドル以上のエネルギーを使用して、1秒あたり約1500万兆ハッシュ(その数は15の後になんと18個のゼロが続くのです)を生成しています。ユーザーが手数料を支払うことを避けるために「自分のブロックをマイニングする」ためには、膨大な量のエネルギーを使用して膨大な計算能力を用意するか、極端に長い時間を待つか、または非常にラッキーである必要があります。

標準のパソコンを使用し、現在のハッシュレートが定数のままだったと仮定すると、ユーザーは自分のBitcoinブロックの1つを正常にマイニングするために何十万年も待つことが予想されます。


自分のブロックをマイニングする場合のシュミレーション
Official IOTA Foundation Response to the Digital Currency Initiative at the MIT Media Lab — Part 4 / 4」より引用

IOTAで使用されているセキュリティモデルは根本的に異なっており、複雑なマルコフ連鎖モンテカルロチップ選択アルゴリズムに依拠しています。そのアルゴリズムはホワイトペーパーで説明されています。更なる検証はフォローアップペーパーで技術シミュレーションをともなって行われています。さらに、ネットワークトポロジ、IoT環境での帯域幅の飽和、その他の設計の独自機能など、このホワイトペーパーで言及されていないその他の繊細な要素もあります。それらはすべてこの記事で扱う範囲外のことです。
しかしながら、スパムやシビルアタック対策用のプルーフ・オブ・ワークのために、IOTAのトランザクションは無料ではないという考え方を少し検証してみましょう。具体的な数字を見るために、ホワイトペーパーの26ページから引用します。

IOTAでは、取引を発行するのに適したハッシュを見つけるためにチェックする必要があるナンスの数は不当に大きくはありません。平均して約\(3^8\)です。

これが意味することは、実際の問題としてIOTAのトランザクションにかかるコストは現在で、平均的な家庭用パソコンを約二十秒間動かすのに必要な電気量なので、ほぼ0.000001ドルぐらいだ、ということです。これは熱力学の法則によるものであり、サービスの提供に対する報酬と定義される”手数料”ではありません。将来DLTがスタンダードになれば、ハードウェアにはASICがチップ内に組み込まれ、時間とコストを1000分の1に減らすことができるでしょう。IOTAは最初からIOTを促進するためのDLTの必要条件であることを明言してきました。事実、それがIOTAが立ち上がった理由のすべてです。

これとは対照的に、Bitcoinのトランザクションは執筆時点で30ドル以上のコストがかかります。このコストはトランザクション自体から徴収され、次のブロックにトランザクションを含めるインセンティブとしてマイナーに支払われます。さらに、一回のBitcoinトランザクションのエネルギー消費は、米国の家庭10軒分の1日以上の電力を供給することができるのです。

4.IOTAハッシュ関数で見つかった脆弱性

DCIの主張:

デジタルカレンシイニシアチブがIOTAのCurlハッシュ関数に欠点があると発表すると、そのCurlハッシュ関数の作者Sergey Ivanchegloは、この脆弱性に関する2つの矛盾する説明をだしました。最初の説明は、欠陥が意図的であったということでした。つまり、それは「コピープロテクション」の一形態として役立つことを意図していたということです。もし誰かが自分の作品でこのコードを使用した場合、Sergeyがいうことには、IOTA開発者はこの欠陥を利用して、Curlハッシュ関数を使用しているそのシステムにおり与えることができるだろうということでした。しかしながら、後になって、Curlハッシュ関数はAIによって書かれたもので、彼は全くもってCurlハッシュ関数を書いていなかったという矛盾した説明をしたのです。

私たちは、例え独立した論として片方だけを取り上げてみても、これらの説明のどちらも説得力があるとは思えません。そして、更には二つの説明はお互いに矛盾しているので、ますます説得力に欠けるでしょう。

最初の暗号学的な脆弱性レポートは(そのレポートに述べられているように)、Ethan Heilman (ボストン大学、パラゴン財団、コモンウェルス暗号)、 Neha Narula (MITメディアラボ)、 Thaddeus Dryja (MITメディアラボ、ライトニング・ネットワーク開発)、 そして Madars Virza (MITメディアラボ、Zcash)によって著されました。Neha が Medium に投稿した「IOTAにおける暗号学的な脆弱性」と題したブログ記事があります。このレポートでは、DCI はCurl-Pハッシュ関数で実用上の衝突を明らかにしました。しかし、DCIチームには、そのCurl-Pハッシュ関数は暗号学的関数でもないし、暗号学的関数として作られたものでもない、ということを何度も伝えてきたのにも関わらず、彼らはその事実を理解できなかったのか、あるいは意図的に公表しませんでした。オープンソースのIOTAプロトコルに配置されているCurl-Pハッシュ関数は意図的に2つの異なる入力が同じハッシュ出力になる実用的な衝突を含んでいました。これは暗号学の基準からすると非常に深刻な欠陥と言えるでしょう。

DCIのレポートの公表に至るまでの数ヶ月間、EthanとNehaはIOTAの共同設立者であり、Curl-Pハッシュ関数のコア開発者兼主任設計者であるSergey Ivancheglo(通称 Come-from-beyond)と直接連絡を取り合っていました。これらの電子メールは、DCI側の会話内容が編集された状態で公表されました(私たちは、EthanとNehaに未編集の電子メールのやりとりを公表するように再度要請します)。Sergey側の電子メールの内容から推察できるように、Sergeyはリリース前にレポートに修正を加える機会を与えられました。以下の電子メールに示されているように、Sergeyは、自分が設計した関数を「Curl-P」と呼ぶようにお願いしました。またその関数は、意図的に実際の衝突を許容するために設計されたものなので、それを「暗号学的」と呼ばないようにともお願いしました。

投稿者:Sergey Ivancheglo、2011年9月6日

「Curl」は「Curl-P」に置き換えられるべきです。「暗号学的な」という言葉は取り除かれるべきです。なぜならCurl-Pは実用的な衝突を許容するように設計されているためです。

DCIは、これらの訂正を公表したレポートで無視することを決めました。もちろん、Nehaが続いて発表したMediumのブログ記事でも上記の訂正は無視されて「IOTAにおける暗号学的な脆弱性」と題されていました。DCIが発表したリポートには、少なくとも注意書きには正確に”想定された攻撃は”以下ではない”と述べられていました。

攻撃者に対しては”アリスのmsg1への署名を見ることなく、msg2への署名を生成する”というより強固な攻撃目標を想定できますが、私たちの攻撃では、これほど強固な攻撃目標は達成されません。
・・・
第3章で述べたように、私たちはIOTAネットワークに対するこれらの攻撃のいずれもテストしませんでした。
したがって私たちは、IOTAのコーディネーターがこの攻撃にどのような影響を与えるかを予測することはできません。

これが意味することは、最初の私たちの回答の通り、これらの攻撃は現実的と言えるものとはかけ離れており、実践的に実行可能のものではないということです。成功するために同時に満たすべき条件を以下に箇条書きします

  1. Bundleに署名を手動で行えるほどのプロ的なプログラミング技術を備えつつ、他人の作ったBundleに署名してしまうような愚直なユーザーを見つける。
  2. そのユーザーに属する複数のアドレスが、どれであるかを知る。(しかし、IOTAにおけるアドレス生成の仕組みを鑑みると、意図的にわざわざ教え合うなどしないとそれは不可能なことである。)
  3. そのユーザーがネットワークに接続するのを阻止すること(エクリプス攻撃)、もしくはそのユーザーよりもはるかに高速にネットワークに接続できる。(IOTAのメッシュ状のネットワークの特性からすると、これも実現は困難である。)

これら実現不可能とも言える攻撃シナリオはとりあえず置いといて、私たちはこの記事をある種の機会と捉え、意図的衝突が発生しうるハッシュ関数Curl-Pを採用した理由について話させていただきたいと思います。こうすることで、現行ドキュメントの乏しい説明と、今まで様々な投稿やプラットフォーム上で行われてきた不十分な説明がやや無計画に広まってしまったことへの責任を私たちは取りたいと思います。

コーディネーターがクローズドソースで運用されていることを理由に、このに対してコーディネーターがどのような役割を果たすのかをDCIチームは予測できなかったと報告書は正確に認めています。これについて答えを述べると、コーディネーターの様々な目的のうちの一つとして、まさにこの衝突攻撃を防ぐための特別設計が施されていた、というのがその答えです。この方針についてSergeyが理論的根拠を持ってRedditのここで説明しています。その中で最も関係するところを以下に転載します。

IOTAはオープンソースソフトウェアです。国家による管理の元、オープンソースソフトウェアはライセンスによって守られています。それに反する行為は法の下に訴えられます。暗号通貨業界においては、この国家の監視が行き届きにくいことが実証されてしまいました。そして、この特性を利用した大多数の詐欺プロジェクトが一般人を騙しています。IOTAチームは、IOTAの土台となった技術の利用を試みようとすることに対しては歓迎いたします。また、IOTAにとって後押しにもなりうるだろうからです。IOTAの認知度が向上し、Tangleがそれだけ価値のある技術だということの証明にもなるからです。しかし、残念なことにIOTAのコピーが正しく使われた例は著しく少ないです。私たちにしてみれば、IOTAもどきと言えるプロジェクトが人々を騙して、騙された人たちの人生をメチャクチャにし、それによってTangleの信頼が損なわれるのは、見るに堪えないことです。これこそ、(意図的衝突が存在するCurl-Pハッシュ関数という形で)コピー防止メカニズムが初期の段階から実装された理由です。

コピー防止がどのように働くかを説明する際に欠かせないのがコーディネーターの存在です。IOTAの現在の状況に不審な点があれば、コーディネーターはある意味、絶対神として振る舞います。デジタル署名はIOTAネットワーク上のあらゆるノードで承認されますが、その承認手続きを通過した署名は、たぶん有効です。その署名が本当に有効であることを確実にするために、ノードはその署名を格納しているトランザクションが、あるマイルストーン(訳注:コーディネーターが発行する特殊なトランザクションのことで、主にTangle上のチェックポイントとして使われる)によって承認されるのを待ちますが、そここそがコピー防止装置を付ける完璧な場所なのです。皆が通常の署名承認をしている間、真の署名承認は定期的なマイルストーンの更新によって行われています。この仕掛けはテレビで見られる手品師のフォーカス・トリック(人の注意力を利用した手品)と似ています。このトリックがとても完璧に機能したので、私がトリックの要点を何回も説明したのに、Neha Narulaのチームは引っかかってしまったのです。

さてすべての署名は正当なものとして認められる前に、コーディネーターの認証を受けなくてはならないということが分かった今、Curl-Pハッシュ関数について説明させていただきます。Curl-Pハッシュ関数を開発する必要性の正当な理由は説明しました。三進数による数理システムはまだ黎明期ではありますが、今日主流の人工神経回路網(Artificail Neral Networks)を実装した専用のチップも開発中であったりと、将来は三進数によるCPUも間違いなく登場するでしょう。これについて深入りすると話が脱線してしまうのでここではこれ以上語らないことにしますが、IOTAのブログで関連情報は探すことができます。Curl-Pの開発者として、私はその特性については十分熟知しています。私は意図的な衝突のためにラウンド数を変えました。コーディネーターありのIOTAにおけるセキュリティはハッシュ関数の原像計算困難性(一方通行性)に依存し、コーディネーターなしのIOTAにおけるセキュリティはハッシュ関数の強衝突耐性(衝突の少なさ)に依存します。これは非常に重要な部分であり、あなた方の「IOTA開発チームはソースコードに故意に欠陥を紛れ込ませた。」という言い方は間違いです。IOTAはCurl-Pの衝突による影響は受けません。しかし、パクった詐欺師たちは影響を受けるでしょう。

要約すると、Curl-PはIOTAのオープンソースのコードをコピーされることから守り、悪用されることを防ぐためにあります。この意図的衝突が明らかにされた今、コピー防止としての意味はもちろん無くなった(知られるまでは意味があったのですが)ので、業界標準のKECCAK-384暗号学的ハッシュ関数に変更することを余儀なくされました。この説明にDCIはなぜか納得いかないようです。また、Sergeyの2回のCurl-P設計の説明には矛盾点があるというDCIの主張もよく分かりません。Curl-Pは実際に進化的アルゴリズムという特定のAI技術を通じて制作されました。その目的はコピー防止装置として実際の衝突を許容することでした。この二つの発言のどこが矛盾しているのか、あるいはどうしてそのどちらも−たとえ単独でも−説得力がないのか、私たちには理解できません。

ハッシュ関数、AI、意図的衝突などの暗号技術的な話は一旦おしまいにして、さらに重要な質問について話したいと思います。Ethanはそのレポート内のプレゼンに置いて重要なことに触れています。それが以下の二つです。

  1. 私たちはIOTAにコピー防止のバックドアを発見していたのか?
  2. オープンソースコードのコピー防止対策として、バックドア・脆弱性を設計することは倫理的に正しいことなのか?IOTAは、GLP(GNU 一般公衆利用許諾書)のライセンスを受けています。

一つ目の質問の答えはもちろんYESです。これはすでに申し上げた通りです。対照的に、二番目の質問はとても大切な問いで、はるかに複雑で簡単には答えられません。もしEthanがこの質問の重要性を正しく認識していたと仮定するとしたら、どうして「IOTAの暗号学的な脆弱性」というセンセーショナルなタイトルを付けたブログ記事の中で、そのことにまったく触れなかったのか不可解です。しかしながら、彼の思惑がどうであれ、DLT界隈のオープンソースソフトウェアの倫理に関する議論は、DLTコミュニティーにとって、極めて大切なものです。

SergeyがRedditで述べたように、GNU 一般公衆利用許諾書
(GNU Public License(GPL))
に指定されているからといって、コードをいかなる目的や方法でコピーして使用してもいいという意味ではありません。GNU 一般公衆利用許諾書の定めない領域で使用されたケースは裁判で法的責任を負うことになります。しかし、分散型台帳の世界では、ご存知の通り分散化され非中央集権的であるがゆえ、ネット上の匿名不正利用者を特定することは不可能です。そのため有効な法的保護も期待することができません。そのような環境のもとで、善良なオープンソース・ソフトウェアの貢献者たちは、一体どうやって自分たちの仕事を不正目的の利用から守ることができるでしょうか?

SergeyはIOTAを設立する以前、Nxtを設立し、匿名性オンライン・アイデンティティBCNextに取り組んでいた際に、上記シナリオと全く同じような状況に出くわしました。Nxtは当時世界初の完全なプルーフ・オブ・ステークによる分散型台帳プロトコルでしたが、Nxtのオープンソースを悪用した詐欺行為が横行し多くの無実の人々が被害にあってしまった経緯がありました。Sergeyと他のIOTA共同設立者たちは、IOTAでは同様のことが起こらないようにしようと決意していました。

IOTAチームは早い段階からこの最悪の可能性を防ぐために、意図的衝突を含んだCurl-P設計を施しました。これは詐欺目的にコピーされただけのプロトコルを使えなくするための仕掛けですが、しかし同時にIOTAプロトコルとそのネットワーク全体を安全に保つようになっています。善良なオープンソースソフトウェアの開発者がビジネスのためにIOTAの仕組みを採用したならば、間違いなくそのソースコードを使って製品化する前に広範囲に検査やテストをするでしょう。分散型台帳にとって署名メカニズムは根本をなすものであり、見たこともないCurl-Pには特に厳しいチェックがなさられるはずです。そのような善良な開発者たちならCurl-Pの本当の機能を見落としてしまうことはないでしょうし、おそらく使いなれた業界標準の暗号アルゴリズムを部分的に採用するでしょう。しかし、詐欺師たちはどうでしょうか。その逆のことが起こるでしょう。詐欺師たちはソースコードを詳しく精査することもないだろうからです。Curl-Pの巧妙に設計されたメカニズムはIOTAのソースコードの悪用を不可能にすることにより、善良な開発者と一般市民にとって利益となります(少なくともDCLのレポートが公になるまでは)。意図的衝突を含んだこの設計はスマートガンというふうに見ることもできます。権限のあるユーザーが持っているときだけ機能します。しかしスマートガンと異なって、その効能は秘匿である限りのみ有効だったということです。

NehaやEthan、その他のメンバーは世間に多くの詐欺やペテンが蔓延っていることにはいい思いをしていないはずです。暗号通貨業界を正常化するための有効な手立てもなければ、悪人たちを突き止めることもできないこの状況下で、善意を持った貢献者たちは無実な人々をどう守っていくべきでしょうか。善意を持った貢献者たちは時に特殊な予防策を取ることが必要です。完全な透明性が人々の安全を必ずしも保証するとは限らないこともあります。科学者たちはこの透明性と機密性のジレンマに未だ答えを見出せていません(危険な化学化合物の発見などはいい例です)。IOTAはもちろんオープンソース主義が目指す透明性の理想を強く支持しています。しかし、私たちの取り組みが悪用され人々を傷つけることは望んでいません。これらは議論し尽くせない難しい問題であり簡単に答えを出せるものではありません。しかし最後には誠実で正直に取り組んでいることが最も重要であると私たちは信じています。他人にどう言われるかなどはあまり関係ないのです。

このような分散型台帳コミュニティにとって重大な問題について、NehaやEthanなどの同胞たちと真摯に議論できずに、脆弱性などの有る事無い事を問題視する扇動的な煽り記事とFUDを沈めることだけに日々を消費しなければならないことはチームの醜体です。もしいつかDCIチームが脆弱性コードを発表したら、私たちは喜んで正式にその影響について調査するでしょう。

これを機に、意図的衝突採用の裏側にあった理由が皆様に明確に伝えられたこと、また、分散型台帳コミュニティが倫理やオープンソース、分散型台帳の正しい用途とは何かについてなどの議論が発展して行くことを願っています。私たちはそれに期待しています。

結論

このめまぐるしい業界の中でIOTA財団はおよそ時間通りにIOTAプロトコルの開発、来たるIoT業界におけるIOTAの立ち位置の確保に尽力してきました。

私たちはメディアに上記で見受けられたIOTAデータマーケット関連の混乱については後悔しており、そのようなことが将来起こらないために今後は用心して参ります。加えて、本記事や引用した文献を総合することで、DCIが挙げた懸念(手数料なしの仕組み、Curl-Pハッシュ関数の衝突、IOTAネットワークの信頼性、アドレス再利用ができないことから生じる不便なUX)に対しては十分に回答できたと考えています。IOTAは斬新で複合的なプロトコルです。そしてこれらの課題は、まだ芽が出たばかりのベータ版の技術には付き物です。IOTA財団は継続してセキュリティの改善、IOTAトークン所持者の保護、コミュニティとの正確で誠実なコミュニケーション、財団としての目的の完遂のために取り組んで行く所存です。

それと同時に、IOTAプロトコルとIOTA財団の名声を損なうような議論が一致団結して起こされることを危惧しています。IOTAが取り組んできた成果を改善するために深く丁寧な議論をするのではなく、DCIチームは、扇動的な見出しと誤解を招くような記事で混乱を引き起こし、分散型台帳の業界の亀裂をさらに深めてしまいました。

Bitcoinのホワイトペーペーが発行されてからちょうど10周年。私たちは2018年が業界全体の転機となり、さらなる革新と最先端の業界となるべく成熟する年となることを願っています。私たちとしても、技術としてのIOTA、人間としての我々自身をより良くするために邁進し、分散的で非中央集権的な未来を目指す、この共有されたビジョンを実現するべく全身全霊で取り組んで行く所存です。

心より。
IOTA財団。

P.S.

この数パートに渡って続く長い記事を読んで頂けたことを何より感謝しております。コメント欄以外にもStackExchangeフォーラム、Slack(現在はDiscordに移行)、Subredditにて議論できます。IOTA開発者、研究者、コミュニティ参加者が様々なプラットフォーム上で、懸念、本記事で取り上げられた問題について質疑応答が行われております。参加はいつでも歓迎しております。

4つのパートによって成り立っています。他のパートへのリンクは以下となります。
パート1
パート2
パート3
パート4(この記事です。)

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